5
少し開いてる窓からは、
このところ急に涼しくなったおかげ様、
それは冴えた感触のする 秋の夜気がすべり込んで来ているはずで。
同じ空間からはまだまだ幼い虫の声とか、
お隣やその向こうの住人の部屋からは、
夜長のお供にと観ている テレビの音だって聞こえてる…はず。
ああ、でも、
もはや そんなの届きもしない。
だって、お互いしか見えてないし感じてない。
急くような吐息から生まれる むせ返るような熱にくるまれ、
総身を巡る血脈が起こす熱に浮かされて。
甘い熱にとろりと潤む 互いの双眸に見とれては、
充血しきった唇を 幾度となく重ねて貪り合い。
ああと陶酔したままの愛しい人が、
追い上げられてのこと、
血を昇らせての上気させ、赤々と染めた肌の中、
まだ白いまま残している喉元に眸を引かれ。
瑞々しくも柔らかな秘処の肌、
まだ足りないとでも言いたいか、
キスという愛咬で塗り潰すかのよに襲い尽くすイエスであり。
“離れた端からあっと言う間に乾いてく、
甘くて熱いお砂糖の砂漠みたいだ……。”
あの 気高くも優雅で、知性と慈愛を静かにたたえる釈迦牟尼様と、
同じ存在とは全く思えないほどに。
悩ましげに身を捩らせて、
苦しいものか吐息も肌も同じほどに熱くて。
今の今、愛する人から組み敷かれている彼の人は、
ただただ甘くて嫋やかな、
ともすれば頼りない様子で 陶然としているばかりではあるけれど。
“それでも…。////////”
その麗しさには厭らしいところがないままであり。
こちらが恋情に濁った目で見ているからかな、
いやいや それでも眩しいほどに、
風貌も所作も、どこを取っても可憐で初々しくて、
そのくせ、気を抜けばたちまち畏れ入りたくなるほど端麗で。
唇や頬の愛らしさも、指先や腕の神々しさも、
喉元の儚さも肩口のまろやかさも、
胸懐ろの肉づきの、淡いまでの柔らかさも。
腕を回して引き寄せた なまめかしい腰つきも、
すんなりと伸びやかな脚から伝わる 健気なわななきも。
抱き心地のよい充実と、
それへまといつく嫋やかなしどけなさには
ただただ酔いしれるしかなく。
なのに…含羞み混じりなせいか
しがみつく力はあくまでも切ないところが相俟って、
イエスの心持ちをずっとずっと
やわくつねっては甘くくすぐってやまなくて。
「は…あ、……あ。/////////」
ただ重なり合って触れているだけなところも、
相手のちょっとした身じろぎにさえ刺激され、
その震えや動揺が、
微妙な疚しさが加わるせいか、
こちらへはゾクゾクと伝わって、
そこが悦くってしょうがないのが、
いわゆる背徳の罠なのかも知れぬ。
だがそれは、実はブッダの側とて同じこと
夏からこっちの寝間での睦みは、
ともすれば…身の内へ頭をもたげた淫らな熱を
外へ解放せねば収まらないくらいまで、
限界ぎりぎりまで追い上げられるような、熱さと深さにまで至っており。
イエスには“違う違うっ”と思い切り否定したものの
少しくらいは 甘えかかられているような感覚もありきでいたし、
だから受け入れやすくもあったのだろに。
急速にこうまでの熱を帯びた展開なのへ、
微妙に翻弄されているのも事実。
人のことは言えないながら、それほど経験値が高いイエスではないので、
想いも拠らぬ何かをされるというわけでなし。
さっきの、えとあの、
途轍もなく敏感なところだって、今宵初めて いじられた訳だし。///////
“でも……。///////”
それは夢中になって抱きしめてくれて、
自分の想いがどれほど伝わるものだろかと
もどかしそうに切ない口づけをくれるのが、
この胸を 奥底からぎゅうっと振り絞られるほど嬉しいし。
唇以外の肌への口づけには、
そのしゃにむさに煽られてだろう、
心地のいい悦だと思うより先に
肌が泡立ち 総身が燃える。
「あ…。//////」
そんな中へ不意に沸き立つのが、
指先やつま先へまで突き抜けるような唐突な刺激で。
熱を孕んだ何かが襲い来ては翔ってゆき、
そのたびに灼かれるような感覚に見舞われてしまう。
耐える暇さえ与えられず、ただただ背条が反り返るばかりで、
そんなつもりなんてないはずが、
無意識にかかとでシーツを擦るように蹴っており。
そうやってその身をずり上げてしまうのは、
身の裡にこもった刺激が強すぎるせい。
逃げたいつもりなんてさらさらないのに、
そんな気配にも通じるからだろ、
イエスの腕による睦みの拘束、
しっかと抱きしめられているその力が、
すがりつくよに強められ、
「…ぶっだ?」
すぐの間近から、気遣うような声が届く。
声をひそめているからか、低めのそれは、
ただ掠れているだけでなく、
語調や語尾が吐息に飲まれかけたよになっており。
そうまで やや乱れているのは、
彼もまた少なからぬ興奮状態にあるからで。
ああ、そんなところまでもがますます愛おしいと切なくなるものの、
「な、んでもない。気にしないで…。」
いつからだろか、息がつらいほど胸が苦しかったれど、
その辛ささえ、得も言われぬほど甘く、嬉しいほど幸せで。
案じなくっていいんだよと熱に潤んだ声で応じる。
こんな劣情の熱なぞ、この人へ気づかせてはならないのだと、
常の我慢をしかけたところが、
「だめ。」
……………………はい?
自分に比すればうら若く、
まだどこか幼いところも多かりしな恋人さんは、
こちらをそれはそれは大切に思ってくれてだろう
睦みの間は もうもうただただ優しいはずが。
甘さに濡れての末とはいえ、
微妙な苦悶に苛まれている相手へ
いやに端的な否定の言葉を寄越したものだから。
「……いえす?」
耳にしたブッダも
つらいの甘いのどちらも含め、思考がそのまま止まりかけたほど。
あまりに短かったせいで、
すとんと降りて来た壁のような印象、
まさかと思うが冷徹に突き放されたような気もしたものの、
「我慢するの、ダメなんだからね。」
微妙な掠れをまとわせた声がふわりと近づき、
ばらとオレンジの香りにくるまれる中、
腕ごと抱きしめられてたその拘束が、やんわりながら きつくなる。
「私に気づかれないようにって、
どんなに追い上げられてしまっても
陰蔵相でもって隠してたって言ってたでしょ?
そんなのもうダメなんだからね。」
「あ…。////////」
途端にびくくっと肩が震えたのは、耳元で大好きな声にて囁かれたからではない。
それがありあり判るよな、間合いと跳ね上がりようだった辺りが、
人のことは言えないくらいに 初々しい正直者な如来様であり。
囁いたそのまま、柔らかな福耳の端へちょんとキスされて、
「〜〜っ。///////」
再び びくくとまろやかな肩が震え上がったが、
怖がらせるつもりじゃあないよと言いたいか、
イエスの腕が片方だけほどけ、
頼もしい手がブッダの頬を包み込んでそのまま撫でてくれて。
「恥ずかしい?」
誰もいないし、物音には関係ないがそれでも明かりも点いてはない。
そんなそんな秘められた空間で、
それ以上はないくらい間近に寄り添いあっているにもかかわらず、
声という音になるかならぬかというほど掠れさせた声で、
こそりと訊いたイエスなのへ、
「 …。////////////(頷)」
薄暗がりさえ透かすほど真っ赤になって、
小さくあごを引き、頷いたブッダであり。
見えたというより伝わったかすかな振動で、それと拾ったイエス様。
二人の周囲へ広がっていた、
ブッダの豊かで長い深色の髪を一房、恭しくもその手へ掬い取ると、
口許へと引き寄せて手のひらの上で口づけを一つ。
そんな所作はブッダの側へも伝わっており、
「判った。じゃあ見ないなら いぃい?」
「あ…。////////」
何も悩ましげな煩悶や媚態を全部全部見たいと餓えているわけじゃあない。
先程、それは刺激が強かったと怯んでしまったブッダを慮ってくれて、
胸元への悪戯、今は控えると言ってくれたように。
慣れない官能が込み上げるのへ
困ったように恥じらう姿も、愛でたい媚態には違いない。
されど度が過ぎる欲は律義なブッダを困らせるだけと、
それは本意ではないこととし、寛容なところを示してくれるこの余裕よ。
“だって、私だって初心者なんだし…。////////”
欲しい欲しいにむしゃぶりつくばかりになって、
愛しいブッダを困らせたり、傷つけるのは嫌。
根性なしのへっぴり腰なのは今更なのだし、
そうと焦れられた方がよほどマシ…と。
背中と布団の間へ割り込ませていた腕で、
さっき遅ればせながらシャツを脱ぎ去った胸元へ、
愛しき釈迦牟尼様を ぐいと引き寄せて。
おでことおでこをくっつけると、
「我慢しちゃダメ。
私がこういう高まりに怯んで逃げ出そうとしたのへ、
そんなの怖がらなくていいって、
特別の“好き”を捧げたからこそ感じるものなんだから、
それも覚悟しなくちゃあって
そう言ってくれたのはブッダでしょ?」
それは響きのいいお声、
ブッダが大好きな、豊かな尋もつ このお声で、
しかも“キミに限定だよ”とのトーンで甘く甘く囁かれては、
「〜〜〜〜〜っ。////////」
耳から直に頭も胸もとろかされ、
ゾクゾクするやらドキドキするやら、どうして否やと言えましょか。
「…ぇっとぉ。///////」
それでもまだ恥ずかしいには違いなく。
幾合もの間をおいてからやっと、片手をそろそろと下肢へと延ばし、
そちらはまだ履いたままでいた
トランクスの下へとすべり込ませて。
「…っ。//////」
自分で触れるのだって随分と響くほど、
尻込みするよに腰が震えてしまうほど、
実をいや、相当な高まりを既に十分蓄えてもいた段階にあり。
それでなくとも、
政略結婚で出会った女性と
どこか義務のように後継者たる子を成しただけの蓄積しか持たぬ身。
愛なぞ欠片もなかったつながりだったとはさすがに言わぬが、
その後すぐにも出家をし、解脱を得、
煩悩は捨てよと説き、清廉静謐であるのが常態だった身で
気が遠くなるほど長々と過ごして来たせいか、
久々過ぎる今はといや、
目覚めたての青少年レベルで感じやすいのも無理はなく。
“〜〜。//////”
秘処から引き出すのさえ、
それなりの自慰のようなビクビクとした刺激が響いてのこと、
指先にまでそれと伝わる、新たな反応が起きての恥ずかしく。
だがだが、
“………あ。//////”
頭ごとの正に総身を ぎゅうと懐ろへ掻い込まれ、
それ以上なく抱きしめられているがため、
こちらの手元どころか、今は顔さえ見えはせぬはず。
そうであるとの安堵をくれつつも、
励ますように大きな手が背中をさすってくれたのが、
熱を孕んだドキドキをもっともっと倍増させるかと思いきや、
“…えっとぉ?//////”
それが何とも幼い所作だったのが、
こんな場合なのに、妙にホッとさせられて。
“もおぉ…。//////”
彼だとて、自然な生理現象としての夢精は何とか知ってたようなので。
ほんの今の今、肩が震えたのも伝わっただろに、
くちりという水音もして、それから思うものだってあるだろに。
手持ち無沙汰で甘えたくてか
“んん〜っ”と頬擦りしてくれた、
その拍子にこっちの頬をこすった格好の、
お髭のくすぐったささえ嬉しくて。
「……………いえす。//////」
「んー?」
お風呂からもう上がったのかい?とか、
くっく もう脱げた?とか。
幼い子を相手に御用は済んだかと訊くような、
ちょっぴり間延びした声音なのがまた やさしくて。
うん、済んだよという代わり、
こちらからも うりうりと、
ちょっぴり堅い胸板へと頬擦りをして甘えれば、
「もう、我慢するの無しだからね?」
口許を触れさせているのだろ、囁きごと髪をくぐった吐息が温かい。
その感触に くすぐったいよォと微笑った隙を衝かれたようなもの。
いやいや、イエスの側とて、
この期に及んで 騙し討ちとか悪戯とか、
そんな悪気を起こすつもりなぞ さらさらなかったに違いなく。
懐ろの中へと掻い込んでいた愛しいお人の、
顔やら肢体やらを再びのぞき込もうとしたか、
しっかと抱きすくめていた格好のその腕をゆるめ、
片方だけを無造作に浮かせて引き寄せたその軌道が…
まずいと言っちゃあ、まずかった
はやばやと明かりを落としていたし、
早々にその気が駆け出してしまったため、
掛け布の中へとすべり込まぬままだったことは、まましょうがない。
組み敷く姿勢ではあれど、完全に下敷きにしてしまうのは忍びないと、
イエスの気遣いから、やや斜めに身をずらして寄り添い合っていた。
そんな暗がりの中の、そんな空隙だったからこそ、
至近でありつつも見ないでという、
ややこしい“ごそごそ”も出来たのではあるが。
それまで掻い込んでいた愛しいお人の腰の下から
ひょいと引き抜いた格好の腕の先が、
恋人さんの含羞むお顔という垂涎の美景へ、
ついつい気を取られてのよそ見をしたがため、
中途半端な途中で止まったそのまんま、
無造作に とすんと降りており。
「 え?」
「あ、ごめん。///////」
何にか触れたかどうかも判らぬくらいの接触。
手の甲の側に触れた布の感触と、ブッダのかすかな声とに
驚くほど素早く我に返ったイエスではあったれど。
「あ、あ…っ、…っ!///////」
きつきつに高まっていた それが暴発し、
総身を内から振り絞るよな、
それはそれは強烈な淫悦がほとび出す。
苦痛なんだか快楽なんだか、
甘いのだか痛いのだかも判らないほどの境目があっけなくはちきれて。
多少は甘やかな愛咬を交わしていた二人であれ、
そんなものとは比にならぬ級のそれが襲い来て。
しかも間近には取り乱すところを一番見せたくない人もいて。
この期に及んで、そんなことまで想いが及ぶあたり、
後から思うに 実は結構余裕があったのかも知れない如来様だが、
それもまた、一瞬の刹那にそよいだ幻夢のようなもの。
そんな曖昧模糊なものよりも、
「う…くう…っ。///////」
咄嗟にぐうと歯を食いしばったこちらの気配を悟り、
だがだが不思議と、慌てるより何より先にイエスが示した行動こそ、
奔流に翻弄されるままだったブッダを なのに泣きたい気分にさせた。
「大丈夫、大丈夫だからね。」
再びぎゅうと、
腕の中の愛しい人を 力の限りに抱きしめていて。
途轍もない快感への不安か喜悦か、
恐らくはその両方が入り交じる、大きな大きな奔流が
総身を攫うのへのせめてもの抵抗、
声を限りと叫ぶことで感情を解放したくなるものだろに。
これだけはとの必死な様子で双手で口元を覆うと
全て押さえ込んだブッダであり。
その代わりのように大きく身をのけ反らせるのへ、
いくらでもすがりついてと
今のブッダが一番頼りにする腕が、胸が、
迷うことなくのすぐさま、
怯みもしないでぎゅうと抱き締めてくれたのが、
どれほど驚かされ、そしてどれほど感激したか知れぬ。
“…いえす。///////”
胸のうちにて絶叫したし、声なき叫びも多少は洩れた。
その激しさに、喉が張り裂けそうだったほどでもあって。
それでも振り切り切れないくらいに際限無く続いた、
とめどなくも激しい奔流へじりじりと飲み込まれ。
ただただ嵐に揉まれる小船のように翻弄されるばかりになり、
今しも手放しかかっていた意識を、
だがだが、何とか繋ぎとめていられたのは。
どこにもやらない、大丈夫だよ、と
それこそ全身で押さえ込むように抱いててくれた、
イエスの声と強い抱擁から受ける感覚のお陰でもあって。
触れられるだけでも新たな刺激が起き上がるので、
嫌だイヤイヤとのたうちまわり、無意識のうちにも抵抗したろに、
それでも怖がることもなく、その腕から離さずにいてくれて。
時折、頬や額に唇を当てるだけのキスをくれたし、
ひくりと引き付けるような動きが出れば、
腕の力を増させ、大丈夫だからと囁き続けてくれて。
それがどのくらい続いたか。
「………………あ。///////」
不意打ちだったからこそのこと、
息が止まるか、永遠に続くかと思えた、
そうまで凄まじかった 快楽によるさいなみも、
さすがに数分もすれば、何とか終息をみたようで。
総身にかかっていた強ばりが徐々にほどけ、
その代わりのようにはあはあという荒い息が双方から聞こえ出す。
胸は早鐘を打つように激しい鼓動を刻んでいて、
それが呼吸を圧迫するほど苦しかったし、
萎えた総身はそのまま蕩けていってしまいそうで、
かっかと熱いままどこにも力が入らない。
のぼせたようになって、布団のうえでのびておれば、
あの優しい手のひらが
頬を撫でたり髪を梳いたりしてくれているのにやっと気がついて。
「いえす…。」
赤らんだお顔も恥ずかしく、
それだけ愛しさが勝さってのこと、目映い君のお顔を見やって微笑めば、
「ごめんね、わたしのせいだね。」
いたわりの声が掛けられる。
やはりそれなりに、
何がどうすればどうなるというの知ってはいたようで、
突然何に襲われたブッダだったか、
判っていたから抱いてくれたらしいことが、
胸にじわじわと、今度は優しい熱をそそいでくれて。
「ううん。///////」
確かに彼の手が触れたことが引き金ではあったれど、
単に切っ掛けになっただけ。
何をしようと、あのその、弾けたには違いないんだしと、
そこは慎ましくも、照れつつかぶりを振って見せるブッダであり。
肩口までもをほんのりと桜色に染めたままの彼なの、
こっそり灯したバックライトで透かし見て。
ちょっぴりお疲れだというに、それでも何て綺麗なんだろと、
すぐのお隣へ並ぶように横になったままのイエス、
心酔しつつ うっとり見ほれておれば、
「でも、イエスこそびっくりしたでしょう?」
こうまで間近だったのだし、
しかも互いに想いを通じ合わせた聖人同士。
特に意識して使わずとも、
伝心級の何か、抑制の利かぬ感情だか感覚だかが、
ほぼ直接 彼の胸へも伝わったに違いなく。
本人でさえ飲まれそうになったそれ、
イエスにはさぞかし強烈な困惑を招いたに違いないと、
案じるように問いかければ、
「ん〜っと、それどころじゃなかったから平気。」
「???」
いや、だからサ。
キミを抱っこしていて、
大変そうなのへこっちも必死になっちゃってて、
うっとりもしていて、それであのあの、と。
何とも取り留めのないことを、
しかも早口で紡ぐヨシュア様だったけれど
「……いえす。」
「なぁに?」
ふんわり頬笑むメシア様なのへ、
ほどけた美髪をさららと肩の向こうへ流しつつ、
ゆっくりと身を起こした釈迦牟尼様。
ほんのりとしどけない色香がまだ滲んだままなせいか
深瑠璃色の双眸も熱っぽく潤み、
すべらかな頬は霞むようにほのかな紅を透かしておいでで。
それは愛らしい風貌になっていたのへと、イエスが油断した隙をついたか、
「…隙ありっ。」
「え? え?え?」
ほんのりと微笑んだかと思ったら、
そのまま両腕がかりでがっしと捕まっており。
何なになんでと、切れ長の目を見開くイエスを、
そのまま布団の上へと押さえ込む、
今のこの風貌では ややもすると違和感満載、
何ともワイルドなことをしでかす ブッダ様だったれど。
そちら様もささやかに高揚しておいでだからか、
その白い肌がほのかに光っているままに、
腕だけでイエスを床へと釘付けにした如来様、
「もしかして、イエス。
キミ、この後 トイレへ駆け込むつもりだったんじゃあ?」
「う…。////////」
そういえば。
我慢がどういう辛さかも知ってるってことは、
その身で体感してもいる感覚だってことですものね。(笑)
ブッダほどではないけれど、
それでも肩の周りに散らされた長いめの髪に縁取られたお顔が、
ひくりと引きつったのも束の間、
「な…っ!」
「い・え・す、大声出さないの。」
松田さんが飛んでくるかもだよ?
そんなぁ…、といったやりとりがあったかどうか。
先程のブッダをそのまま置き換えたような、
真っ赤なお顔となったまま組み敷かれたヨシュア様がどうなったかは
武士の情けで紡ぎませんが、
そんなこんながあったのの余波で、
いつもはそこにないものが
目覚めた枕元という至近にごみ箱が来ていたのであり。
めずらしくもジョギングへ出損ねたほど寝坊しちゃった
ブッダ様でもあったようで。
新しい季節は急な涼しさだけじゃなく、
特別格別ないろいろも、立川へと運び来たようでございます。
〜Fine〜 14.09.12.〜09.18.
BACK→
*何かいろいろと なしくずしですいません。
きっと、キッチンスペースの戸棚からは
カボチャだのアボカドだのスイカだの、
よく判らない野菜や果物がごろごろ出てくるかもですね。
松田さんが駆けつけるかもなんて書きましたが、
多少の騒ぎも物音も、聖なる盛り上がりに放たれる覇気により、
周辺一体の人々には
何が起きたかなんてすっぱり忘れる奇跡が降ったりなんかして。
(偏った奇跡だ…。)
でもって、
神仏神というのは結構早いころから思ってたCPでして。
経験値の高さは、
方向性が違うだけでどっちもどっち。
確かにスキンシップが習慣化していて、
キスやハグに慣れてるのはイエス様のほうでしょうが、
閨房で睦み合ったことがあるかないかでいえば、
ブッダ様のほうが実体験ありですものね。
とはいえ、髭も生えてるお人が精通を知らないはずは無し。
追い上げられたなら 身の置きどころに困るような反応が出るというのは
イエス様も知識以上、体験以下で御存知だったと。
そんな微妙な人ゆえに、あの後どうする気だったかも不明ですが、
ブッダに何されたかによっては、
大きに楽しい“敵討ち”が待ってるかもですね、明日の晩あたり。(笑)
*こんな後書きを書くくらいの人なので、
せっかくのシチュエーションなのに(せっかく?)
何とも艶のないお話になってしまってすいません。
このお二人の睦みとあって、やはりどこかで気が引けたものか、
具体的なあれこれを生々しく書くのへ腰が引けたせいです。
そのうち慣れてくれば、
ここまでの甘いいちゃいちゃレベルの、でも も少し進んだ代物も書けるかな?
ええはい、まだまだ書きたいです、頑張ります。
これに懲りずに(おいおい)、今後も どかよろしくですvv
めーるふぉーむvv


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